あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2018年11月号)
文:柾谷伸夫
演劇集団風煉ダンス 東京▶酒田▶八戸 三都市連続公演『まつろわぬ民2018』によせて
触媒は「自身とは別の物質の化学反応を促進したり抑制したりする物質」とある。触媒となった小説からロックグループが生まれ、そこから演劇が生まれた。
この原稿を、『白崎映美&東北6県ろ~るショー!!』の渋谷WWWでのライブDVDを観ながら書いている。舞台には演劇集団風煉ダンスが製作した大漁旗を思わせる超大な幕や妖怪が据えてある。開演前、ウェルカムパフォーマンスで、鹿踊りや剣舞等が披露されている。総勢50人を超える出演者群。そして、開演。三味線と西馬音内盆踊りが披露されるなかで、木村友祐の『イサの氾濫』の朗読が始まる。木村の独特な南部弁語りが胸を打つ。「東(とう)北(ほぐ)は、暗くて寒くて貧しいど思われながら、黙々と暮らしてきたべ。したんども、ハァ、その重い口(くぢ)ば開いでもいいんでねぇが。叫(さが)んでもいいんでねぇが。」
『海猫ツリーハウス』ですばる文学賞を受賞した八戸出身の木村友祐。東日本大震災を目の当たりした木村は、東北の置かれてきた歴史に目を向けた。原発事故被害の福島に何度も足を運び、同じ東北人として自問自答する木村。その中から生まれたのが『イサの氾濫』だ。
同じく、震災以降、生き方を模索していた、元上々颱風のボーカリスト・酒田出身の白崎映美が『イサの氾濫』に出合い、彼女の東北の血が騒いだ。「これだ!! オラど同じ想いの小説だ!!」と触発されて結成したのが『白崎映美&東北6県ろ〜るショウ—!!』だ。ロック・ジャズ・歌謡・民謡、そして芸能・神・妖怪・魑魅魍魎なんでもありで、賛同したミュージシャンは20人を超えた。「東北の爺(じ)っちゃ、婆(ば)っちゃを泣がせる奴(やづ)は、鼻くそくらえ〜!!」酒田弁を駆使し、すぐれたエンターテイメント性に溢れた白崎のライブは全国各地で大好評を博した。
そして、このライブに携わってきた風煉ダンスが、今回の歌ありダンスありの舞台:音楽劇『まつろわぬ民』を創った。舞台は現代の所謂ゴミ屋敷。勿論主演は、ゴミ屋敷の住人:白崎映美。ゴミ撤去に関わる曲者揃いの人々やゴミそのものが命を吹き込まれて登場する奇想天外の内容になっている。ハラハラドキドキワクワクの舞台だ。昨年、東京、山形、福島の公演で3,000人を集めている。
今回、地元八戸から、仲坪由起子、木村友祐の実兄木村勝一、そして柾谷が出演する。
『イサの氾濫』に込めた木村友祐の想いが、どんなかたちで舞台に表出されるのか。我々もそうだが、八戸市民の皆様に、12月7・8日の舞台を、是非とも会場で共有していただきたい。