あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2018年04月号)
文:高沢利栄(ダンスバレエリセ豊島/モレキュラーシアター/ICANOFモデレーター)
日本一のスーダラ女子
派手やかな曼荼羅図のごとく場面が変わっていく。観ながら、植木等を思いだしたと言ったら、怒られるでしょうか。
「プロジェクト大山」(以下「大山」)の公演「大山曼陀羅−オオヤマンダラ−」を楽しんで観て来たので、ささやかな感想をしたためてみます。
冒頭。妙齢の美しい人が“何も恐れることはありませんのよ。マッタリとお好きにご覧くださいね”と言わんばかりのメッセージを身体中から放ちながら、不思議な時間の始まりよ、と誘惑します。
「大山」は主宰の古家優里を中心に、お茶の水女子大学舞踊教育学コースの卒業生から成るダンスカンパニー。古家は「横浜ダンスコレクション」「トヨタコレオグラフィアワード」受賞作品ほか注目作をモノし、NHKeテレ「みいつけた!」出演など、現在もっとも注目されるコンテンポラリーダンサーの一人であり振付家です。
メンバーの長谷川風立子は八戸東高卒・ダンスバレエリセ豊島出身で、上演を通して大活躍したのが個人的にはとてもとても嬉しいことでした。ほかの出演者、三輪亜希子・松岡綾葉・菅彩夏も皆さん、確かなダンステクニックをもっているのが明らかで、安心して観客を楽しませます。
この「安心」について少し。際どい朗読あり、ブラックジョークあり、ダンサブルなユニゾンにナンセンスなコント風ありで、万華鏡のように「大山」結成12年の集大成を展開していきます。そして、それらの天衣無縫をしっかりと支えていたのが、ダンスに向き合う真面目さでした。けなげですらあるのです。
初めに、唐突に植木等を引合いに出しましたが、緩さを支える生真面目さに、かつての日本人は安心して大笑いしていたのでした。その二面性と似たような匂いを感じたのかもしれません。
なぜなら、「大山」メンバーがシュシュッと、パパパッと歩き出すとき、その足裏の皮膚が床に少しずつ着地していくその感触が感じられたから。ひゅんと腕を振るときにその風になぶられたから。キュッと目を閉じ、チュッと唇を尖らすとき、その筋肉の動きを見る者もなぞれたから。そんなふうに触覚に働きかけながら、「面白いわね」と上演中に観客に囁かせ笑わせてしまう「大山」、ただ者ではありません。
愛知、福岡、東京と続いたツアー。二年ほど前の南郷アートプロジェクトに続いての八戸公演は、彼女たちの折り返し点になるのかもしれません。
ここまでホップ・ジャンプしてきたカンパニーが繰り出す次なるステップは、どう展開していくのか。曼荼羅図の胎からしなやかに飛び出していく姿を幻視した「大山」集大成のファイナルでした。
(2月24日・25日「はっち」シアター2)。