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あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2017年06月号)

文:大黒屋五郎

八戸で八犬伝、云々?

誌面表示  南総里見八犬伝は映画やテレビで見たり聞いたりしたことがあるかと思いますが、全巻読んだことがありますかとなると皆無に近いはず。
 全98巻106冊!私も全て読んだことが無い。それなのに何故八犬伝をやるのか。
 それは八戸市が市制施行88周年を迎えることから記念事業を行うとの噂を昨年耳にし、一生に一度しかないこの洒落は演劇関係も一つ絡んでおかなきゃいけないと勝手に思い込みピンときたのが八犬伝である。八戸で八犬伝、八のぞろ目で面白いのではという単純な動機が発端であるがそれだけではない。実は30年ほど前、市内の若手芝居関係者が集まって「新宿八犬伝第1巻犬の誕生」(岸田戯曲賞受賞・川村毅作)を公演したが、あの当時はバブル全盛期で、個性的な劇団が次々と旗揚げしエログロ、奇々怪々と一風変わったパワーを発していて私自身ざわついていたのだが、最近はめっきり品が良くおとなしくなった感はある。芝居という虚構はうそぶいたり、奇天烈な表現により観る側も演じる側も興奮するのではないかと前々から私は感じているのだが、88周年を機にたまには腫れ物に触れてみようかなと昨年書き上げたのが今回公演する「八戸八犬伝」である。
 キャストの人数は20名超、舞台も足場を組んで客席約100席、あのシアター2の広さで出来るのかとか、役者は集めることが出来るのかという懐疑、いや心配の声も聞こえるが、これも全てうそぶくためのちょっとした挑戦なのだ。
 今回、妖女玉梓と八犬士を八戸にお招きし? 現代の八戸を舞台に両者の戦いが繰り広げる訳であるが、封じていた結界が何故崩れたか、玉梓は何故八戸に、八犬士はどのようにして集結を、謎の物語である。
 30年前の川村作品とはもちろん違い、映画やテレビの南総里見八犬伝でもなく、ひょっとして八犬伝ではない別の物語となっているかもしれない虚構が始まる。そして結末は…。
 作者が作者だけに品の良さ?が脚本や台詞に反映され、観劇年齢制限となる可能性が大。そのような芝居であるから88周年記念事業としては市非公認なのも納得がいくところである。もっとも申請すらしていないのだから、あたり前田のクラッカーなのだ。
 2017年7月の七夕に天では一年に一度の織姫と彦星が見つめ合うというロマンチックな中、地では600年ぶりに玉梓と八犬士が睨み合うというバトルが展開する。
 舞台と役者と観客との表現と反応が交差する様々な意味での挑戦である。
 観劇可能な年齢の方々は是非ご覧いただきたい。


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