あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2015年01月号)
文:田中稔
ピンクパンサー降臨
12月6日土曜日の昼下がり某所
「中屋敷です。よろしくお願いします。」1日2回延べ人数29名参加の緊張感を漂わせながらのワークショップが始まった。
中屋敷さんの右手にはピンクパンサーのぬいぐるみ。
「はい、今からかくせんぼを行います。」
かくせんぼ? 鬼を真中におき、廻りを囲んだ者たちが鬼に見つからないようピンクパンサーを後ろ手に隠しながら回し、誰が持っているか当てれば鬼の勝ち、当てることが出来ず1分間で1周すれば負けという単純なゲームである。
単純でありながらこのゲーム侮れない。鬼は客であり、廻りを囲む者たちは役者で鬼に感づかれないようにするに役者はどのような表情、態度を演ずればよいか。鬼からどのように観られているかを意識してピンクパンサーが回っていくのである。個々のリアクションだけでは鬼は騙すことができない。持っている者が持っていないふりや、その逆の立場をとる者。舞台上の全員によりピンクパンサー(これは素や弛みなのかもしれない)は鬼に姿を現すことはない。外観だけではなく内面からの化かし合い? 実に興味深いものである。
「次はハムレットの朗読をします。」
ハムレットの台詞を各々が一台詞ずつ言う。これまた単純な動作ではあるが、ハムレット自身が多重人格的な人物であり、台詞自体が多様な感情が入り混じってくる。
その中で自分の台詞が、同じハムレットのどの人格の台詞なのか、誰が言った台詞に対しての言葉なのかを理解して感情を込める。先ほどのピンクパンサーの代わりに言葉(感情の繋がり)での相手に対してのパスが必要となる。自分の中のハムレット探しを皆必死である。
実に興味深く、楽しい時間が過ぎた。
7日、快晴極寒の中18名によるオーディション開始。
緊張、期待、参加者の感情渦巻く中、昨日と同じくピンクパンサー登場。しりとりゲーム開始、え、今日もワークショップを? 昨日と同じように、言葉の掛け合いが始まる。桃太郎、浦島太郎の物語を一言づつピンクパンサーをバトン代わりに語り出す。いつ自分のところに桃色豹が飛んでくるかわからない状況で、言葉の出ない者、物語を無視する者、壊れた物語りを修正する者、様々な性格、発声、感情が現われる、中屋敷さんの表情も参加者の言葉に同期するかのように変化していく。実に面白いオーディション。
約1時間、緊張と、笑いの中で終了し11名のキャストが選ばれた。
中屋敷さんは多い時では年20本以上の芝居を演っており多忙な中、今回はちのへ演劇祭のためのオリジナル作品を書下ろし、演出をする。3月、ドキドキワクワクの中屋敷劇場が八戸で演じられる。観なかった人は悔いが残っちゃうよ。
さあ、11発の弾は装填されました。
皆さんに標準を合わせ引き金を‥‥アッ、ピンクパンサーが!