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あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2014年9月号)

文:中田絢子

どらまぐる~ぷ川・小寺隆韶追悼公演に寄せて

誌面表示  最近、一期一会という言葉の深みを実感する機会が多い。

 私が初めて小寺隆韶先生の作品に触れたのは、去年の『第一回はちのへ演劇祭』でのことであった。仮にも八戸で演劇活動に携わる人間の端くれとして恥ずかしいことに、それまで小寺先生のお名前を存じ上げなかった。渡された数本の短編を何気ない気持ちで読み始めたのだが、一気に引き込まれてしまった。

 その時に読んだのは10分から20分という短い脚本ばかりであったが、どの話も快活でおもしろおかしく、けれどもちょっぴり切なく、そして何よりもすみずみまで血が通っていた。愛おしいけれどもきれいなだけではない、小気味よいけれども愉快なだけではない。人間の「人間くささ」を浮き彫りにする鋭い筆致に、胸が震えた。

 9月に上演を控えた『亀』でも、その手腕は余すことなく発揮されている。弁が立ち、少しお調子者で才覚ある男、大沢健太。彼が営む十和田湖の『亀屋』というちょっと変わったお店を舞台に、恋や家族、人生の悩みを抱えた人々が引き寄せられ、それぞれの人生が交錯し、混じり合う人間模様が描かれる。一見するとコミカルに見える物語の根底には、けれど、表面上だけでは分からない、悲しみ、切なさ、やるせなさ、怒り、理不尽さといった、生きていく上では切っても切り離せない感情もまた流れている。そこで息づく人々の「人間くさい」生き様が丁寧に凝縮されている。

 そんな小寺先生の作品に、まさか自分が出演できることになるとは夢にも思わなかった。お声をかけて頂いた当初は、自分がこの脚本に、そして往年の「演劇のまち八戸」を作り上げてきた大先輩方と一緒にお芝居をするのに相応しい器とは到底思えず逃げ腰になっていたのだが、今ではご一緒できて良かったと心から思っている。大ベテランの方々からの助言は一つ残らず私の血肉となり、日々貴重な経験を積ませてもらっている。小寺先生の脚本、そして諸先輩方との出会いは、私にとってまさに一期一会、得がたい縁であった。まだまだ力不足ではあるが、「演劇のまち八戸」復活の一助となれるよう微力を尽くしたい。

 ところで、演劇の醍醐味は、生だからこそ感じることのできる臨場感や一体感にあると思う。同じ台詞でも、その回ごとに細かなニュアンスは違ってくる。本番で、思いもしなかった心の動きが生まれることもある。どんな瞬間に立ち会えるのか、まさに一期一会の楽しみが、生のお芝居には秘められている。

 小寺隆韶先生追悼公演『亀』は、9月9日から三日間に渡って八戸市公民館で上演される。稽古もいよいよ大詰め。一期一会の大舞台、どうか見届けていただきたい。


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