前へ戻る

あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2014年8月号)

文:豊島重之(美術展キュレーター・ICANOF)

トランス・ダンス・サスペンス!

誌面表示  写真家北島敬三の写真作品が八戸市美術館に全館展示された昨夏に続き、今夏のイカノフ企画展は画家矢野静明の百点もの絵画作品を全館展示する。共通テーマは種差。震災のアフターマス(余波)がこの地上の随処にエンクレィヴ(飛び地)した種差の知られざる側面、いわば「異貌の種差」だ。それは全作品を巡覧し終えた来館者に確かめるまでもない。オープニングのダンス3作が早くも飛び地の主題を明示しているからである。3作とも会場は八戸市美術館3Fギャラリー、入場無料。

 8月22日(金)18時〜矢野静明+石川千佳子宮崎大教授によるオープニングトークに引き続く『のりしろ bis』公演。別名、悪夢の祝祭劇。歴史の闇に葬られたソヴィエト演劇の革命児メイエルホリドの死を、衆人環視の法廷劇に異化したダンスサスペンス。翌23日(土)14時〜『にのまい bis』公演。別名、白昼の空撮劇。ビルケナウ絶滅収容所から奪還された4枚の写真の死力をめぐる秘話。2作とも出演は中野真李・田島千征・大久保一恵・秋山容子ら。補足を一言。ひとは、誰かの過ちを心底知悉していながら、いや知悉するからこそ魅入られたように同じ過ちを繰り返してしまう。それが二の舞いを貫く反復強迫だ。この陰鬱な社会病理を悦ばしき逆走実験にトランスせよ。そこに脱出孔がある。

 8月24日(日)13時半〜及川廣信ダンス公演『矢野静明の作品から/一つの神話』。この神話とは、現実から最も遠い対極にある神話、現実に最も近い安全神話のことか。そのどちらでもない。現実が過度にギラギラしてアクチュアルなため、現実自体が丸ごと神話生成体に裏返ったとしか思えないからだ。現実と神話がまさに刺し違える瞬間の到来。これを見逃す手はない。また、佐々木敦早大教授や鵜飼哲一橋大教授らゲストのトークも聴き逃す手はない。新刊の図録『矢野静明作品集成』も全国の書店(市内は伊吉書院・木村書店・カネイリ)で取り扱い中。その出版記念を兼ねたオープニングパーティが8月23日18時に八戸ワシントンホテルで開催される。

◎問合せICANOF:090-2998-0224/icanof8@gmail.com


前へ戻る

事業内容

スペースベン

舞台支援

はちのへ演劇祭

八戸ダンスプロジェクト