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あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2013年3月号)

文:大澤苑美/八戸市まちづくり文化推進室芸術環境創造専門員

日韓ダンス交流プロジェクト「DANCE CONNECTION」

誌面表示  1月31日、はっちシアター2にて、日韓のアーティストによるダンス作品が上演された。この公演は、横浜赤レンガ倉庫1号館が1996年から開催するコンテンポラリーダンスのコンペティション「横浜ダンスコレクション」の関連事業で、同コレクション受賞振付家の鈴木優理子と、韓国のダンスコンペ「ソウルダンスコレクション」選出のファン・スヒョンが両国に滞在し、ひとつの作品を創作、上演した。
 ふたりは作品を創るべく、英語、日本語、韓国語、ジェスチャー、画像などあらゆるツールを駆使して、お互いを知る試行錯誤を重ねてきた。ふたりが作品化したのは、一喜一憂を繰り返しながら進んできた、ユーモアあふれるこのコミュニケーションの旅路だった。
 作品の冒頭で、犬の散歩、体操競技、絵画といった多様な画像が投影され、この画像をどう身体で表現するのか提示し合い、解釈の共通点や相違を探るようなシーンがある。やがて、無理やりにでも身体表現化しようとするふたりのおかしみのほうが増大していき、観客も、ふたりの違いよりも、いかに違いを持つこのふたりがユニークなポーズを創りだすかに関心が移っていく。
 後半には、これら冒頭で生まれた動きは見ごたえあるデュオのダンスのモチーフとして集約される仕掛けとなっており、踊りに説得力と心地よさを生み出していた。最後には、ふたりが一心同体で転がり歩く様子が映った映像で締めくくられ、お互いを知り合うコミュニケーションが、豊かで実りある旅路だったことを告げているようだった。
 この日は、自由に思考と想像を巡らせることを楽しむ良質なお客さんに恵まれた。観客とふたりの身体との間にも豊かなコミュニケーションが生まれ、それが作用することで作品がより良く仕上がったことは、アーティストにとっても幸せな経験であっただろう。
 ところで、横浜ダンスコレクションと八戸は不思議と縁が深い。昨年度、八戸出身の高橋和誠が最優秀新人賞を受賞。また、2009年審査員賞の古家優里が率いるダンスカンパニー「プロジェクト大山」のメンバーで、自身も新人部門ファイナリスト経験のある長谷川風立子も八戸出身。そのうち、彼らの凱旋公演の機会も設けたいなと妄想が膨らむのだった。


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